相続
2025/10/09 2025/10/10

【相続⑤】遺産分割調停・審判とは?申し立て方法から流れ・期間・費用まで弁護士が詳しく解説

 大切な方が亡くなった後に遺産を分ける際、相続人どうしで意見が対立してトラブルに発展するケースは少なくありません。
 そのような場合には、家庭裁判所に対して、遺産分割の「調停」・「審判」を申立てたうえで解決を図ることになります。

 しかし、遺産分割の調停・審判は人生で何度も経験するものではありません。どのように利用すればよいのか、どのようなことが行われるのかなどについて、詳しくご存知の方は少ないと思われます。

 そこで、本記事では、遺産分割や遺留分、遺言書の作成など相続問題に精通する弁護士が、≪遺産分割調停・審判の申し立て方法≫や≪手続きの流れ≫などを解説します。


はじめに

 被相続人(亡くなった方)が遺言書を作成していない場合には、相続人全員で話し合って遺産の分け方を決めなければなりません。
 つまり、まずは話し合いによる遺産分割協議を行います。

 しかし、遺産分割協議で相続人間の意見が対立し、話し合いがまとまらないこともあります。
 相続人全員が合意しなければ遺産分割協議は成立せず、その結果、遺産を分けることが出来ません

 そんなとき、次の手段として利用するのが「遺産分割調停」です。そして、調停でも解決できない場合、最終的には家庭裁判所が「審判」によって遺産分割の方法を決めます。
 この遺産分割調停・審判は家庭裁判所で行う法的手続きですので、法律で決められたルールに従って進められます。

 申立の期限はありませんが、相続トラブルが長期化すると、特別受益や寄与分などの主張期限が過ぎてしまうおそれもあります。
 そのためトラブルを放置せず、早めに遺産分割調停・審判を申し立てることが大切です。

遺産分割協議がまとまらない原因などは、「遺産分割協議が決裂したときの対処法|調停・審判・弁護士サポートまで」もご確認ください。


遺産分割調停とは

 「遺産分割調停」とは、話し合いによる遺産分割協議がまとまらなかった場合、家庭裁判所において、調停委員を介して相続人どうしが話し合うことで、合意による解決を目指す手続きのことです

 遺産の分け方は、あくまでも相続人全員で決める必要があるため、調停には相続人全員が出席しなければなりません。ただし、弁護士を代理人として手続きを進めることも可能です。

 裁判所では当事者どうしが顔を合わせることは基本的になく、調停委員と個別に面談する方式で話し合いが進められます
 相続人どうしが直接話し合う遺産分割協議とは異なり、遺産分割調停では調停委員が中立・公平な立場で話し合いを仲介するため、冷静に話し合いを進めやすくなります。
 また、裁判所の場で話し合うため、非常識な主張は出にくくなり、妥当な結論が得られやすくなるというメリットもあります。


遺産分割調停の申立て方法

 では、遺産分割調停の申し立て方法をみていきましょう。

① 申立先

 申立先は、原則として相手方(対立している相続人)の住所地を管轄する家庭裁判所です(家事事件手続法245条1項)。
 ただし、相続人全員が合意すれば、合意で定めた別の家庭裁判所へ申し立てることも可能です。

② 必要書類

 申し立ての際は、次の書類を家庭裁判所へ提出します。

  • 申立書
  • 郵便切手(組み合わせや枚数は、裁判所ごとで異なる運用のため、裁判所に事前確認が必要です。)
  • 当事者目録や相続関係図
  • 遺産目録
  • 遺産の内容や評価額を証明するもの(例:預貯金通帳の写し・残高証明書、不動産の登記簿謄本・固定資産税評価額証明書、有価証券の写しなど)
  • 被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本類
  • 被相続人の住民票除票または戸籍の除附票
  • 相続人全員の現在の戸籍謄本(取得から3ヶ月以内のものが好ましい)
  • 相続人全員の住民票または戸籍の附票(取得から3ヶ月以内のものが好ましい)

③ 申立費用

 調停の申立ての際は、1200円分の収入印紙を貼付します。
 
その他に連絡用の郵便切手を家庭裁判所へ提出する必要があります。
 切手代は数千円程度のことが多いですが、裁判所や当事者の数によって異なりますので、事前に申立先の裁判所に連絡のうえご確認ください。

④ 申立てから初回期日までの期間

 申し立てが受理されると、家庭裁判所と日程調整のうえで、初回の調停期日が指定されます。
 初回期日は、通常、申し立てから1~2ヶ月程度先の日となります。


調停の進行と流れ

 遺産分割調停は、以下の流れで進行していきます。

① 家庭裁判所への出頭

 家庭裁判所へ出頭したら、まず書記官室を訪ねて、出頭した旨を報告します。すると、待合室へ案内されます。
 待合室は「申立人用」と「相手方用」で別けられたうえで離れた場所に設けられており、対立する当事者が顔を合わせないように配慮されています

 調停開始時刻になると調停委員が呼び出しに来ますので、案内に従って調停室へ入りましょう。通常は申立人から先に呼び出されます。

② 第1回調停期日

 調停の手続きは、裁判官1名と調停委員2名で構成される調停委員会(家事事件手続法248条1項)によって進められます。
 ただし、実際には調停委員2名と当事者が個別に面談する形で進められていきます

 申立人と調停委員との最初の面談では、申し立て内容の確認や、相手方に希望することなどの確認が行われるのが一般的です。
 ひと通りの話が終わると申立人は退室し、次に相手方が調停室に入って調停委員と面談します。

 このようにして、申立人と相手方とが交互に調停委員と面談する形で、話し合いが進められていきます。
 1回の面談時間は20〜30分程度、1回の調停期日にかかる時間は2~3時間程度が一般的です。

 話し合いを重ねながら、最終的には遺産の分割方法を決めていくことになりますが、その前提問題として、預貯金残高の確認や遺産の評価額も話し合うことになります。
 場合によっては、不動産鑑定が行われることもあります。

 また、特別受益や寄与分の主張がある場合も、調停委員を介した話し合いで相続人間の利害を調整し、合意を目指すことになります。

不動産の評価方法の基礎は、「弁護士が教える|相続不動産の評価方法と分割手段の基礎」もご確認ください。

特別受益に関する詳細は、「特別受益とは?計算方法・対象となるケース・10年ルールまで完全ガイド」もご確認ください。

③ 期日間にやるべきこと

 1回の調停期日で合意に至らなかった場合は、次回の調停期日が指定されます。
 その際、次回までに検討すべきことや提出すべき資料の準備などを、調停委員から指示されることがあります。その場合は指示に従いましょう。

 指示がなくても、それまでの話し合いの内容を踏まえて、改めて言い分をまとめて記載した書面や必要に応じて追加の証拠などを期日間に提出しておけば、次回期日における話し合いをスムーズに進めやすくなります。

④ 調停成立

 調停期日が続行される場合は、1ヶ月に1回程度のペースで期日が開催されるのが一般的です。

 話し合いを重ねて、相続人全員が一定の遺産分割案に合意すれば、調停成立です。そして、調停が成立すると、調停調書が作成されます。
 最後に裁判官が当事者の前で調停調書の文面を読み上げますので、間違いないかを慎重に確認しましょう。

 調停調書には確定した判決と同等の法的効力がありますので(家事事件手続法268条)、その後は調停調書に記載された内容に従って遺産を分けることが出来ます。


不成立になった場合は審判へ

 遺産分割調停で合意に至らなかった場合は調停不成立となり、審判の手続きへ移行します。ここでは、遺産分割審判の流れをご説明します。

① 審判へ移行するための手続き

 調停不成立となった場合は自動的に審判の手続きへ移行しますので、特段の手続きは不要です(家事事件手続法272条4項)。

 初めから遺産分割審判を申し立てることも可能ですが、ほとんどのケースで家庭裁判所の判断により調停に付されます(これを「付調停」といいます。家事事件手続法274条1項)。 
 そのため、実務上は、調停をまず申し立てて、調停不成立となった場合に審判に移行するのが一般的です

② 審判で行われること

 審判では、当事者が提出した主張や証拠を踏まえて、裁判所が遺産の分割方法を決めます。
 そのため、適切な審判を得るためには、十分な主張や証拠を裁判所に提出することが大切です。

 調停で話し合った内容は記録されているわけではありませんので、自分の主張や相手の主張に対する反論を改めて記載した書面を、審判への移行後に提出する必要があります。
 また、調停段階で未提出の証拠があれば、それも提出しましょう。

③ 審判に納得できないときの対処法

 審判の結果は、裁判所から各当事者へ審判書を郵送することにより伝えられます(家事事件手続法74条)。

 その内容に不服がある場合は「即時抗告」をしたうえ、高等裁判所で審理してもらうことが可能です。即時抗告の申立期限は審判書を受け取ってから2週間以内ですので、速やかに申し立てをしましょう(家事事件手続法86条)。
 2週間の期限内に即時抗告がなければ審判が確定します。確定した審判には判決と同等の法的効力がありますので、その記載内容に従って遺産を分けることが可能となります。


調停・審判の期間と費用の目安

 ここでは、遺産分割調停・審判にかかる期間と費用の目安をご紹介します。

① 調停にかかる期間

 調停にかかる期間は、おおむね半年~1年程度が平均的です。
 実際の期間は事案によって様々であり、3ヶ月以内に終了するケースもある一方、1年を超えるケースも珍しくありません。

 財産関係が複雑なケース、相続人の数が多いケース、相続人同士の感情的な対立が激しいケースなどでは、長期化しやすい傾向にあります。

 合意できる見込みが乏しいと思われる場合には、早めに調停を不成立として、審判に移行させることも検討した方がよいでしょう。

② 審判にかかる期間

 審判に移行してから審判が確定するまでにかかる期間は、おおむね半年~1年程度が平均的です。事案の内容によっては2~3年程度かかるケースもあります。

 解決までに長期間を要することも少なくありませんが、不利な審判結果を抗告審で覆すのは難しい場合が多いので、審判に移行したら、じっくりと主張・立証活動を行うことが大切です。

③ 調停・審判にかかる費用

 実費としては、裁判所に納める収入印紙代や切手代の他、戸籍謄本類など必要書類の取得費で、数万円程度で収まることが多いです。

 しかし、弁護士に依頼した場合には弁護士費用がかかります。
 弁護士費用の金額は、事案の内容や依頼する事務所によって異なります。弁護士に依頼する場合は、相談時に費用についても十分な説明を受け、見積もりを取って検討した方が良いでしょう。


弁護士に依頼するメリット

 弁護士費用はかかりますが、遺産分割調停・審判を弁護士に依頼することにより、次のようなメリットが得られます。

① 複雑な手続きを任せられる

 遺産分割調停・審判を申し立てるためには、数多くの書類を作成したり、また取り寄せたりしたうえで、裁判所で手続きを行わなければなりません。

 このような複雑な手続きを弁護士に依頼したうえで一任することが可能です。
 弁護士に手続きを代行してもらうことで、ご依頼者の負担は大幅に軽減されます。

② 冷静な交渉が可能となる

 調停期日には、弁護士もご依頼者と同席し、的確な発言をサポートしてくれます。
 そのため、感情的な発言を回避し、冷静に交渉を進めやすくなります。

 弁護士と一緒に冷静な態度で調停に臨むことで調停委員からの印象も良くなり、交渉が有利に進むことも期待できます。

③ 法的に妥当な結果が得られやすくなる

 遺産分割調停・審判で妥当な結果を得るためには、主張を法的に整理して提出することと証拠を収集して提出することが何よりも重要です。

 弁護士は法律の専門家ですので、このような主張や立証活動を代理人として的確に進めてくれます。法的に有効な主張・立証活動を徹底することで、満足のいく結果が得られやすくなるのです。


まとめ

 遺産分割協議がまとまらない場合、そのままでは遺産を分けることができません。
 相続トラブルの長期化を防ぐためにも問題を放置せず、早期に遺産分割調停・審判の活用を検討しましょう。

 遺産分割調停・審判は裁判所の手続きなので、的確に進めるためには専門的な知識や経験も要求されます。
 しかし、弁護士のサポートを受けることで、労力・時間・精神的な面で負担を軽減したうえで、妥当な結果が期待できます。

 湊第一法律事務所では、相続分野に精通した弁護士が、財産調査から協議書作成、また調停・審判対応まで一貫して対応します
 遺産分割協議がまとまらずにお困りの方は、お気軽にご相談ください。

投稿日:2025年10月9日


【この記事の監修弁護士】

弁護士 嶋村 昂彦
第二東京弁護士会所属
湊第一法律事務所・パートナー弁護士

都内大手事務所および地域密着型の事務所で培った幅広い経験を活かし、企業・個人を問わず、多様な案件に柔軟かつ丁寧に対応。
依頼者に寄り添いながら、確かな法的知見に基づいた実践的な解決策を提供する姿勢に定評がある。

<略歴>
栃木県出身。早稲田大学法学部卒業。慶應義塾大学大学院法務研究科(既習者コース)を修了後、司法試験に合格。
都内大手法律事務所および横浜市内の法律事務所で実務経験を積む。
中小企業法務をはじめ、相続(遺産分割・遺留分・遺言書作成・相続放棄など)・成年後見業務・債務整理などの幅広い個人法務に携わる。
また、神奈川県弁護士会所属時には、犯罪被害者支援委員会に在籍し、犯罪被害者支援といった公益活動にも注力する。
現在は、湊第一法律事務所パートナー弁護士として、企業・個人の双方に対し、信頼と安心をもたらす法的支援を提供するため邁進する。

<主な取扱分野>
企業法務全般(契約書作成・社内規程整備・法律顧問など)
相続問題(遺産分割・遺留分・遺言書作成・相続放棄など)
労働事件(労使双方)
債権回収

<弁護士・嶋村昂彦の詳しい経歴等はこちら>

 

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