相続人どうしが面識のない状況下で、遺産分割の交渉を弁護士が代理。丁寧な交渉の結果、家庭裁判所での調停を回避し、スピード解決した事例。 |
目次
ご相談の背景 |
ご依頼者様の配偶者であるご主人様が亡くなられたことにより、相続が開始しました。
そこで、ご依頼者様は、相続手続きを進めるため、まず、被相続人であるご主人様の戸籍を取り寄せて確認しました。すると、ご依頼者様以外にも複数の相続人が存在することが判明しました。
ご依頼者様は、その方々の存在自体をまったく知らなかったため、これまで一度も会ったことがなく、居住地すら分からない状況でした。
いきなり手紙や電話で連絡を取るのは怖く、また相手を不安にさせたり、話がこじれてトラブルに発展してしまうのではないかという強い懸念を抱いておりました。
見ず知らずの相続人との交渉を自分で進めるのは大きな負担であり、不安が尽きない状況の中で、「弁護士が代理人として窓口になってくれるのであれば、すべてお願いしたい。」というお気持ちから、当職にご依頼いただくことになりました。
担当弁護士の対応 |
ご依頼者様には、平穏で迅速な解決を望むというご意向がありました。このようなケースでは、初動の対応と、各相続人への丁寧なアプローチこそが、円満解決の鍵を握ります。
① 相続人と遺産の確定調査 |
まず、ご依頼者様に対して、遺産分割の解決に至るまでの流れをご説明し、見通しを丁寧に共有しました。
≪遺産分割の解決までの一般的な流れ≫ |
㋐ 相続人の調査 |
㋑ 財産調査・遺産目録書の作成 |
㋒ 各相続人へのご連絡 |
㋓ 遺産分割協議(交渉) |
㋔ (合意ができた場合には)遺産分割協議書の作成・締結 |
㋕ (分割内容を実現するため、)不動産や預貯金・株式など名義変更に関する手続き |
遺産分割に関するご依頼によって、弁護士が「交渉の窓口」となります。つまり、ご依頼者様が他の相続人の方と、やり取りを直接する必要がなくなり、全ての連絡は弁護士経由となります。
この点を明確にすることで、ご不安を抱えていたご依頼者様の精神的ご負担を軽減することに努めました。
次に、ご依頼者様がすでに準備されていた戸籍謄本を精査するとともに、「職務上請求権」を行使して、不足している戸籍や住民票を収集し、相続権を有する全ての相続人を正確に調査しました。
万が一、相続人が1人でも欠けたまま、遺産分割を実施してしまうと、その分割の合意は無効となってしまいます。したがって、戸籍による相続人の確定作業は重要となります。
これと同時に、遺産の確定作業にも着手しました。
ご依頼者様のお手元にあった通帳をもとにして、各金融機関への「残高証明書書」の請求をし、また不動産については、法務局で「登記事項証明書」を、役所で「固定資産税評価証明書」を取得しました。こうした裏付け資料を一つひとつ集め、誰が見ても正確で透明性の高い「遺産目録」を作成することに努めました。
この遺産目録の存在は、後の交渉で疑念や不信感を生じさせないために、極めて重要な役割を果たします。
② 相続人への丁寧な連絡と情報開示 |
相続人と遺産の内容が確定したところで、いよいよ他の相続人への連絡になります。
最も配慮すべき点は、「突然の連絡で相手を驚かせない、不安にさせない」ことです。
弁護士名で、各相続人宛に書面を送付しますが、その文面では、次の点を、丁寧かつ分かりやすい言葉で記載するよう心掛けました。
㋐自己紹介と受任の経緯 | ご依頼者様の代理人弁護士であること、そして、ご依頼者様が円満な解決を望んでいることを冒頭で伝えました。 |
㋑ご逝去の事実 | 突然のことで驚かれるだろうお気持ちに配慮しつつ、故人がお亡くなりになった事実を伝えました。 |
㋒相続関係の説明 | 各相続人が、被相続人の法律上の相続人にあたることを説明しました。 |
㋓透明性の高い情報開示 | 作成した裏付け資料付きの「遺産目録」を同封し、全てを開示しました。 |
㋔法定相続分に基づく分割案の提示 | 法律で定められた法定相続分に基づいて計算した、具体的な遺産分割案を提示しました。 |
㋕今後の連絡窓口の明示 | 今後のご連絡は、全て弁護士が窓口となることを明確に記載し、ご質問やご不明な点があれば、いつでもお気軽にご連絡いただきたい旨を伝えました。これによって、ご依頼者様に直接連絡することへの心理的なハードルや、逆にご依頼者様が直接連絡を受けることの負担をなくしました。 |
この書面は、内容証明郵便ではなく、受け取る方に威圧感を与えにくい特定記録郵便で送付し、相手方への配慮を最大限に示すことにしました。
③ 誠実な交渉と合意形成 |
書面を送付してから数日のうちに、相続人全員から、お電話や書面でご連絡をいただくことができました。
当初は、突然の知らせに戸惑っておられるご様子でしたが、ご質問の一つ一つに対し、当職は誠心誠意、丁寧に説明いたしました。
その結果、送付した遺産分割案に、相続人全員が同意することになりました。
当初の想定では、話がまとまらなければ、「家庭裁判所での遺産分割調停もやむを得ない。」と考えていました。しかし、粘り強く、かつ誠実に対話を重ねることで、法的手続きへの移行を避けることに繋がったのです。
これを受け、当職は、合意内容を反映した「遺産分割協議書」を作成しました。
この協議書には、どの遺産を誰が取得し、不動産を売却した代金をどのように分配するか、といった具体的な内容を明記しました。すでに信頼関係も構築できていましたので、皆さま、速やかに対応していただき、無事、相続人全員の署名押印が揃った遺産分割協議書を完成させることができました。
この遺産分割協議書の完成によって、ご依頼者様が当初抱えていた、「見ず知らずの相続人との交渉」という懸念事項は、迅速に解決できることになりました。つまり、家庭裁判所における調停や審判に移行した場合と比べ、時間的にも、費用的にも、そして何より精神的なご負担を大幅に軽減することができました。
④ 分割協議後の名義変更 |
その後、完成した遺産分割協議書に基づき、具体的な相続手続きの実行まで、責任をもってサポートいたしました
・預貯金の解約や分配: 各金融機関に対し、遺産分割協議書と必要書類を提出し、被相続人名義の口座をすべて解約しました。その後、合意した分配額を各自に送金しました。 |
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・不動産の相続登記: 提携する司法書士と連携し、遺産分割協議書に基づいて、不動産の相続登記も行いました。 |
弁護士が介入した結果 |
✅弁護士が交渉窓口となったことで「見知らぬ相続人と直接やり取りする不安」から解放。
✅相続人全員に対して、正確な「遺産目録」と「分割案」を提示。
・丁寧な説明と誠実な対応により、相続人全員が分割案に納得。
・全員の署名・実印押印・印鑑証明書が揃い、「遺産分割協議書」が無事に完成。
✅家庭裁判所での調停や審判に進むことなく、合意が成立。その結果、次のメリットを実現。
・時間的負担の軽減(裁判所手続を省略)。
・経済的負担の削減(調停費用や長期化リスクを回避)。
・感情的対立の回避。
✅協議成立後もワンストップサポート。
・預貯金の解約や分配。
・不動産の相続登記(司法書士と連携)。
✅遺産分割手続きの解決と手続完了まで安心して任せることができ、ご依頼者様の大きな精神的負担の軽減に繋がる。
担当弁護士のコメント |
今回の案件は、相続人どうしが面識のないという、現代社会においては珍しくない遺産相続のケースでした。
このような案件における最大のポイントは、 「いかにして感情的な対立を避け、冷静かつ合理的に話し合いを進めるか」 という点にあります。
相続問題では、「争いが起きてから弁護士に依頼するもの」とお考えの方も多いかもしれません。
しかし、実際は、
・争いを未然に防ぐ
・円満な話し合いの場を整える
ことこそ、弁護士が果たす大きな役割です。
湊第一法律事務所では、
・相続人の調査 ・財産の確定・遺産目録作成 ・法的に有効な遺産分割協議書の作成 ・その後の煩雑な名義変更手続き(預貯金・不動産登記など) |
まで、ワンストップでサポートする体制を整えております。
「会ったことのない相続人がいる」・「どこから手続きを始めればよいか分からない」といった場合でも、どうぞお一人で抱え込まず、まずはお気軽にご相談ください。
お気持ちに寄り添い、安心して手続きを進められるよう、最善の解決策をご提案させていただきます。
初回相談は無料・全国いずれの地域にお住まいでも対応可能ですので、ぜひ、ご安心してお問い合わせください。
投稿日:2025年8月22日
【この記事の監修弁護士】
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弁護士 嶋村 昂彦 都内大手事務所および地域密着型の事務所で培った幅広い経験を活かし、企業・個人を問わず、多様な案件に柔軟かつ丁寧に対応。 |
<略歴>
栃木県出身。早稲田大学法学部卒業。慶應義塾大学大学院法務研究科(既習者コース)を修了後、司法試験に合格。
都内大手法律事務所および横浜市内の法律事務所で実務経験を積む。
中小企業法務をはじめ、相続(遺産分割・遺留分・遺言書作成・相続放棄など)・成年後見業務・債務整理などの幅広い個人法務に携わる。
また、神奈川県弁護士会所属時には、犯罪被害者支援委員会に在籍し、犯罪被害者支援といった公益活動にも注力する。
現在は、湊第一法律事務所パートナー弁護士として、企業・個人の双方に対し、信頼と安心をもたらす法的支援を提供するため邁進する。
<主な取扱分野>
・企業法務全般(契約書作成・社内規程整備・法律顧問など)
・相続問題(遺産分割・遺留分・遺言書作成・相続放棄など)
・労働事件(労使双方)
・債権回収